まんだらけ福岡店 1F 【悪役～Villain acter～】コミック：歴史が彼を悪にする

『蒼天航路』

これまで、様々な「三国志」が創られてきた。
そして、多数の媒体で「三国志」が語られてきた。

そもそも物語を展開するに、その面白さや高揚感、喪失や希望を表現する為に、必ず「善と悪」が存在する。
これは物語の定義だろう。中にはそれに当てはまらない物も存在するが、「少年マンガ」は特にその「善悪」がハッキリとしている。
「善」の純粋さや義心に共感し、反する「絶対悪」を滅する為に共に闘うのだ。
今月の福岡店のテーマはその「悪」に焦点を当てている。
いわゆる「悪役」であり、嫌われる存在として評されている彼らを「主役」に据え、新たなる「悪」への真髄を深めていきたいと思っている。

さて、書いている本人もよく分からなくなってきた前置きはさておき。
そこで冒頭に戻ります。「三国志演義」から始まった創作三国志は、改めて三国志を語らずとも良いほどに、一般化した物語である。
中国の三大奇書の一つとして挙げられ、世界中で最も知られた歴史物語だと云ってもいいだろう。
三国志マンガで有名なのが、横山光輝氏による三国志。はだしのゲンと一緒に、学校の図書館に置かれたマンガ本だったという人も多い（うちはそうでしたヨ）だからだろうか。
横山三国志は、吉川三国志の小説が軸になっている部分が多い。
その吉川三国志は、物語の基本となる「三国志演義」が主である。

で、三国志演義は、陳寿が記した、バリバリの蜀贔屓物語。
三国志は、後漢の時代、魏呉蜀の三国が約100年間争った戦争記だが、この演義のお陰か（羽目か）、蜀を中心に創作されている作品が非常に多いのだ。
物語は「善悪」という分かりやすい大軸があるから面白い。
そこで陳寿や、吉川氏や横山氏は、「善を蜀」「悪を魏」とした。
三国志において、「悪」は魏で、魏は曹魏の名の下統治され、曹魏の君臨者は「曹操孟徳」だった。

よって「悪」はそのまま「曹操」なのだ。
これが至極一般的な考えである。確かに後の儒教者達により、とことん合理主義だった曹操の政は受け入れられず、中国一の嫌われ者となってしまった歴史もあるが、それを語りだしたら小一時間では終わらないので省略します。
多数の媒体で「三国志」を取り扱われた事により、昔ほどではないものの、やはり「三国志」といえば、仁の劉備で、最強軍師の諸葛亮が主なのは周知の事実であろう。
今回ご紹介する「蒼天航路」は、その三国志において「絶対悪」と認識された「曹操孟徳」の出生から最期までを壮大なスケールで描いた物語である。

ここまで長々と書いてきたわけだが、何がそこまで語らせるのかと申しますと。
「絶対悪」の曹操はやはり「悪」で、「善」と認識された劉備も諸葛亮も、登場する者全てが雑魚に至るまで、「完全悪」だという事である。
確かに蒼天では曹操を主人公としている為、曹操や魏国中心に物語りは進む。
しかし、少年マンガに在りがちな、主人公を惹き立たせるのに必要な「絶対悪」を単純に蜀や呉、また董卓や袁紹にはせず、あくまで曹操も「悪」で、彼らも全員「悪」なのだ。
言い換えれば、善悪とは表裏一体の関係にあり、見方が変われば善にも悪にもなり得る。

蒼天は全員が「悪」で「善」なのだ。
己が信念が唯一で不可欠な「善」であり、反するモノは全部「悪」蒼天航路の面白いところはソコにある。
漢達の信念が凄まじく、誰もがそれが正義だと思っているからこそ、対する人物関係がリアルでいい。
誰かを贔屓しているとするならば、多分オリジナルキャラクターのとある女性なんだろうな・・・とは思うけど、主人公の曹操を一切贔屓しない思い切りの良さが、この作品の魅力だと感じる。
そして、その曹操を取り巻く人物も、「あべし！」と散っていく雑魚サンから、死亡フラグ満載の中ボス、ちょっと（いや、だいぶ）オカシイ主役格サンまで、とにかく出てくる人達、味ありすぎです。

史実や演義とは違った三国志漫画。初心者には衝撃を、中級者には新発見を、上級者には至高の娯楽として、オススメしたいマンガである。

余談だが、福岡店一の三国志ファンだと豪語したい担当者。・・・といっても、ホントはゲーム担当者なんだが。
三国志を語ると止まらないのが玉に瑕。

省略しすぎて消化不良な感じもします（惇兄とかバチョさんとかニイハオ甘寧とか！）
ただこれを云わせてくれ！郭嘉好きなら読むべし。PS2の三国志戦記以来です。
あんなに郭嘉を採り上げてくれる三国志作品は・・・ほぅ・・・最高っ。

『蒼天航路』全巻完結セット
状態：ヤケ有
価格：特価\14,070-

※掲載商品は当日店頭でも販売いたします。売り切れる場合もございますので予めご了承ください。

(担当矢口)