まんだらけまんだらけ中野店 4F 記東大紛争と東大全共斗

『知性の叛乱』山本義隆著昭和44年前衛社刊 \3150
『東大紛争の記録』東大紛争文書研究会昭和44年日本評論社刊 \840
『わが愛と叛逆』所美都子著昭和44年前衛社刊 \525

東大全共斗と云へば山本義隆。
なんでさうなるのかと云へばキット写真が格好宜しいからでございませう。

しかし、『知性の叛乱』たァズヰブンとアナクロなタイトルですなァ(「反動的」な正仮名遣ひの者にアナクロ呼ばはりされたくないだらうが)、恐らくはまだまだ「知」といふものに対する素朴な信仰があったんでせうな。つまり「知性」が時代とともに発展すれば絶対無謬の理想幸福社会が到来すると云ふ人間賛歌、あゝ……気色悪い。

いやいや、別に東大紛争や東大全共斗を全面的に否定するつもりはございません、その依拠する進歩史観に対しては失笑する他ありませんが、その情熱(或ひは情念)に対しては大いに敬意を払ってをるつもりです。たゞ『知性の叛乱』なんて云はれると折角の輝かしい戦歴にもミソがつくよ、と云ひたかったのですが、ま、時代のせゐなんでせう。

あとモウひとつ、東大生が『知性』なんて云っては不可ませんな、東大に行きたくとも行けなかった人からすれば厭味にしか聞こえませんので。新井将敬といふ自殺した政治家が何かの本か雑誌で語ってをりましたが、彼も東大生時代に東大紛争にも関係したとのことですが、東大に入れなかった他大学の学生が「東京帝大粉砕!」なんて云ってるのを聞いて興醒めしてしまひ保守転向した、なんてことを云ってをりましたが……どうも不可んですな東大生は。
愚生の知ってる東大生もさうですが、自分の客観的立場といふのを心得てをらぬ人が少なくない。エリートの無意識的な厭味といふか、まァそれが魅力でもあるんですけどね。

しかし、東大紛争や東大全共斗を学生運動の象徴のやうに云ふのはどうかと思ひます。
なんとなれば実際に対権力斗争を貫いた連中の殆どは東大以外の学生だったのですから。
70年代前後から牧歌的だった学生運動がだんだんキナ臭くなり、その尖端の連中はますます過激化。
革共同両派による死者100人を超す内ゲバから、赤軍派の武装闘争と連赤事件、アナキスト爆弾闘争、最近では革労協の内々ゲバまで、まさに死屍累々。

その間に東大全共斗の「斗士」たちはなんとなくフェイドアウトして、社会人になって資本主義社会に適合或ひは迎合し、それどころかしまひには市場原理主義の牽引役になったりして今では「金余りの団塊世代」なんて云はれたりして優雅な生活を送ってをります。それが良いか悪いか、アナでもボルでもないワタクシにはよく判りませんが、ま、そんな東大紛争関係書籍の入荷がありましたのでご案内致します。

(担当山口ケン)