2006年に500部(のちに100部増刷)のみ自費出版された、福満しげゆき先生の初期短編集。
初期作品と聞けば一般的に、荒削りな作風や指先に落ち着く前の絵柄やなんかが醍醐味なわけですが、この一冊はちょっと異様です。
なんだかもう「詰んで」「やめた」主人公と不良品のロボットが、体育座りで妙な会話をする“初期”です。
すでに絵柄も世界観も原型が完成しています。
奇を衒わず愚直に描かれたであろうその情緒不安定な空間は、一見すると閉鎖的です。けれども幾つかのセリフがふいに心に響き、作者も私たちと変わらない19歳だったのだとなんだか安堵するのです。
根暗をこじらせたような鬱々とした流れになんとまあ不健康なこと!と思いつつ、さりげなく1本の話にまとまっている力量も感じられます。
そして後にロボットは妻に、曇天の地べたは家庭の中に変わってゆき、『僕の小規模な生活』になるわけです。
描かれた順番が逆じゃなくて本当に良かった。
10年後に描き下ろされた最後の数ページでは、冒頭と全く同じ状況下で主人公はたまに笑っています。するとこの本のタイトルがかすかな自己肯定に見えた……なんて、私の頭の中がお花畑過ぎますかね。
8月10日から3階本店IIのショーケースに出します。6,825円です。
(担当 白石)
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