まんだらけ 小倉店

L.S.C in 小倉 〜ライトノベル普及委員会〜【第11回】座右の銘「こいつぁ、すごいぜ」を知っている人へ(その3)

そろそろ、今年のベスト10をまんだらけのスタッフも決める時期にやってきました。
おそらくライトノベル関係も今年度のベスト10を決める的な本が出ると思いますが、担当はまだ決められるほど今年読んでいません。
むしろ、昔のラノベを読み返してばかりいます。

というわけで、今回も自分が好きだった古いライトノベルのこと書いていきたいと思います。

(図1)

「ユミナ戦記」(図1)は、富士見ファンタジア文庫のライトノベルです。
作者は吉岡平先生。すでに「無責任艦長タイラー」が大ヒットしていた1990年から、月刊ドラゴンマガジンに連載され、約2年で完結した作品です。

『異世界に召喚された現代日本の少年』という、言葉にするとかなり陳腐になってしまう初期設定の話ですが、 舞台がいわゆる中世風ファンタジー世界ではなく、古代日本のような世界(由弥那)であることと、 その世界の強大な戦士が主人公と瓜二つであり、その戦士の悪評に苦しめられるなど、周辺ギミックはかなり斬新です。

主人公の一人称で話が進むというのも珍しく、ときおり主人公・成宮晟(なるみやあきら)が、読者に向かって話しかけるなど、幾分メタ視点で話が進むのもおもしろさの一つです。 また、主人公の一人称ゆえ、主人公がかかわらなかった事件・主人公が覚えていないことはあくまで主人公の主観でしか語られず、 それゆえ最終回の敵との最終決戦がすべて後から思い出しての回想という、かなりとんでもない体裁をとっています。

「タイラー」が大長編になってしまったのに対して、「ユミナ戦記」は、全2巻でこれ以上ないくらい潔く、さわやかに完結しています。
主人公が成長していく冒険ファンタジー、という点ではライトノベル屈指の作品でもあり、 藤島康介先生のイラストも素晴らしく、作中に登場する巨大ロボ・崑崙は、のちの「サクラ大戦」の光武のモデルかもしれません。

(図2)

吉岡平先生といえば、忘れられない怪作が「鉄甲巨兵SOME-LINE」(図2)です。
平成元年(1989年)に発売されたこの作品は、まだ”スーパーロボット大戦”シリーズなど存在しなかった時期に、 昭和が終わるやいなや書き始められた”巨大ロボットアニメのパロディ”です。

もちろん、”タイラー”の吉岡先生ですから、ただのパロディではありません。
登場人物ほぼ全員が、自分たちの置かれている状況(巨大ロボットアニメ的世界観)に対して、感想や皮肉を言うメタな展開や、 わざわざ章立てを”全26話”にして、2クール放送できる、などと作中人物に言わせたりと、悪乗りしまくった内容です。

あれから約20年たち、昭和のロボットアニメと近作のロボットアニメが共演するゲームが広く世に出回ったり、歴代ガンダム作品が戦いあうゲームが発売されるような
現在の状況を『オタク第一世代』の吉岡先生はどう思っているでしょうか。

「スレイヤーズ!」の神坂一先生を別格とすれば、黎明期の富士見ファンタジア文庫(つまりはライトノベルの一角)を支えた一人が、吉岡平先生だったのは間違いありません。
巷間で最も有名な「タイラー」以外にも、上記の作品や「エクウス」「夢龍戦士アインレオン」「アイドル防衛隊ハミングバード」 「旋風のカガリ」などの作品をファンタジア文庫で発表し、また他のレーベルでも”ライトノベル”を書き続けています。
20年以上ライトノベル業界で頑張られている吉岡先生には、単純に一ラノベファンとしても感謝したいです。

今回も一人の作家さんだけで終わってしまいました。
次回のネタも古いラノベです。

(担当 有冨)

※この記事は2008/12/10に掲載したものです。
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