ゲームが原作のノベル、は数多く存在しますが、『ゲームみたいな世界観』のノベルがライトノベルには存在していたことを思い出しました。
![](p1.jpg)
(図1)
といっても20年間で刊行された巻数はそれほど多くありません。
作者の深沢美潮先生は、YA(ヤングアダルト)小説も手掛けており、また「デュアン・サーク」という別シリーズもあるため、刊行が遅くなるのは仕方ないかもしれません。 (といっても20年はさすがに長すぎるとは思いますが)
「フォーチュンクエスト」は、ある設定さえのぞけば、極めてオーソドックスな冒険ファンタジー小説です。
ただ、『登場するキャラたちにレベルや経験値が明確に設定されている』という点で、この作品は異彩を放っています。
この物語に出てくる冒険者たちは、みな冒険者カードを持っていて、そこに経験値やレベル、はては職業や生年月日まで記入されているという念の入れよう。 まさに”コンピュータRPGのようなシステムで成り立っている世界”です。
やったもん勝ち、というと聞こえが悪いですが、まだライトノベルという言葉すらできていない20年も前にこんな一見安易に見えて誰も思いつかないような設定を作った深沢先生のアイデアは賞賛されていいと思います。
実際、「フォーチュンクエスト」は、ライトノベルレーベルのみならず、児童小説の老舗ともいうべきポプラ社からもシリーズが刊行されています。
ゲーム的な設定を持つ物語が、子供に広く浸透しているという証左の一つと言えるでしょう。
![](p2.jpg)
(図2)
このシリーズの巻末にはかならず、登場人物たちのゲームとしてのキャラクターデータや、 登場したモンスター・魔法・アイテムデータなどが詳細に記されていて、当時のユーザーを喜ばせる要素の一つとなっていました。
純粋な量で言うとそうでもありませんが、TRPGとノベライズの相性は、純粋なゲームノベライズのそれより親和性が高いことが多いように見受けられます。
次回もゲーム原作のライトノベルについて考えます。
(担当 有冨)
※この記事は2009/3/16に掲載したものです。